新潟名物タレかつの歴史

 

 
 
タレかつの歴史
西堀のほとりを歩く、古町芸妓さん。
 
新潟市中央区西堀と柳

[写真は新潟市提供]

とんかつ政ちゃん「卵でとじない醤油タレのかつ丼」について

■港町新潟 屋台から始まった新潟スタイルのカツ丼

数ある料理の中でも、庶民的な味わいとボリュームで人気の「カツ丼」。全国的には、とんかつと玉ねぎを醤油味の割り下で煮込み、溶き卵で包むスタイルが一般的だと思います。ところが、新潟でカツ丼といえば、卵でとじない「タレかつ丼」を指します。

タレかつ丼の発祥は、昭和初期(1930年前後)まで遡ります。江戸時代より「みなとまち」として栄えた新潟市は、物資を運ぶための堀が町中に張り巡らされ、堀に沿って柳が植えられていました。堀沿いを古町芸妓たちがそぞろ歩く姿は、とても風情があったそうです。

現在は埋められて道路になっていますが、「西堀」も庶民に人気の堀でした。当時、西堀沿いには中華そばや寿司など、さまざまな屋台が長屋のように並んでいました。現在の古町6番町の「とんかつ太郎」創業者、故小松道太郎の屋台もその一つ。

屋台で提供していたのは、当時モダンな洋食として人気だった、薄目に仕上げたかつを複数枚、醤油ベースの甘辛いタレにくぐらせて、ごはんの上にのせた卵でとじないかつ丼でした。どのような経緯でこのスタイルになったのか今となっては知る由もありませんが、これが新潟タレかつ丼のルーツであり、今もその伝統を受け継いでいます。

■命名で「タレかつ丼」が新潟のソウルフードに

とんかつ太郎で修行した後、1965(昭和40)年に独立し、新潟市沼垂に『とんかつ政ちゃん』を開店したのが、当社の創業者である故高橋正光です。当時から地元新潟では今で言う「タレかつ丼」を単に「かつ丼」と呼んでいました。新潟市民にとってこの「かつ丼」がスタンダードなのです。

新潟タレかつ丼の美味しさが徐々に全国に浸透していき、各地のメディアから取材を受ける機会が多くなり始めたのですが、当時は卵でとじないということだけで、「ソースカツ丼」と一括りにされてしまうことが多々ありました。他県のソースカツ丼の知名度が先行していたからかもしれません。

『とんかつ政ちゃん』を引き継いだ2代目・高橋正広は、「他にはないこの美味しいかつ丼を広く知ってもらうには、独自性を表す固有の名称が必要だ」と考え、1990年頃に“卵でとじない醤油タレのかつ丼”、“新潟タレかつ丼”、“タレかつ丼”、“タレカツ”、などの呼称を考案。取材などを受ける度に、そのルーツと共に各方面にアナウンスしていきました。その結果、次第に『タレカツ』はもっと広く浸透していき、新潟のソウルフードへと昇華していったのです。

■「とんかつ政ちゃん」美味しさの秘密

「タレ」
タレはタレかつ丼を総合的に完成させるための重要な構成要素です。当然のごとくタレの基本となるスープも一から作ります。また、調味料の調合割合が同じならいつも同じ味になるものでなく、調理過程における加熱速度、加熱時間、冷却速度、季節にも影響されますから、環境を整え細心の注意を払い仕上がりの調節をしています。

「豚肉」
信頼する業者様から選びぬかれた豚肉を納入頂いております。丹念に筋引きなどをして整形し食味の良い部分だけを残しますから、使える部分は50%程度になり、さながら大吟醸酒の米の様を呈しています。恵まれた環境で修行を重ねた職人が、家伝の技法に最新の技術をとり入れ、豚肉の持つ本来の美味しさを味わっていただくために手間隙をいとわず賛を尽くしたとんかつです。

「パン粉」
細かく更に水分含有量が少ないものを敢えて選択しています。何故ならば、パン粉は揚げたときに、含まれた水分と揚げ油が置換します。生パン粉は水分含有量が多く、更に粗めであると、サクサク感やボリューム感の表現をすることが容易くなりますが、その分油を多く含むのです。タレの絡み方も変わり成立しなくなります。当店では「新潟タレかつ丼」としての全体のバランスを整えすっきりと仕上げます。

「ごはん」
新潟県産のコシヒカリです。更にその中でも食味の違いはもちろん粒状感まで選別をしています。また炊き方も重要項目であるので、AIを搭載した炊飯器も導入しています。これらによってタレの絡み方も違ってくるのです。すっきりとしたタレの絡み方と、当社が目指すタレかつ丼に合致した食味を追求し、最高の完成度になるようにしています。

「揚げ油」
豚肉は豚脂で揚げるのが理にかなっています。それも添加物のない高品質な純正ラードでなければなりません。さらに重要なのはその管理です。酸化や劣化、汚れがないように常に香りよく、さらっとフレッシュな状態を保っています。

「揚げ方」
肉の部位や、温度が何度なのか、厚みによって、火を通すだけならば、何カロリーの熱を加えればよいか数値化は可能なのですが、それだけでなく覚悟を決めた職人の感覚が重要になってくるのです。巧緻な油の温度調節はもちろんのこと、音の変化、重量感の変化など、五感で見極めます。

■進化していく「タレカツ」

数十年程前からはテレビや新聞、雑誌に、近年ではネットなどで取り上げられることが多くなり、新潟の名物として知られるようになった「タレかつ丼」です。今では、当店以外でも多くのお店でメニューに採用されるなどして広く提供されるようになり、新潟は「タレカツ」との認知度を高めることになったと思います。その中でも老舗である当店は、常に洗練された味を追求しています。
「流石です。これが本物です。本当に来てよかったです。必ずまた来ます。」 など、多くの方々から高い評価を頂いております。

タレは創業以来、毎日々継ぎ足して60年になりました。タレは注文が入るその度ごとに美味しくなります。多くのお客様のご来店があってこそのことであり、
今日のかつ丼が一番美味しいのです。
「タレカツ」はこれからも進化していきます。

 

令和6年11月

 

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